第23章 【胸の棘】
胸に刺さった棘は、やがて痛みを伴う毒針と化す。そして身体の中で、毒はどんどんと黒く、闇の如く心の奥底に渦巻いていく。時間を追うごとに体を蝕んでいくその毒針を取り除く術を、彼女はまだ知らない。
【第21話】
ハグリッドからハーマイオニーの話しを聞いてからと言うもの、ここ数日、クリスは浮かない顔で毎日を送っていた。あの大好きなルーピン先生の授業中でさえ、ため息を吐く始末だ。今日も今日とて浮かない顔で夕食の席に座るクリスは、ため息交じりで、もそもそとポテトを口にしていた。
「……クリス、何か悩み事?」
「僕達で良かったら相談に乗るけど……」
遂に見るに見かねたハリーとロンが口を開いた。クリスは「んー……」と考えてから、2人にハーマイオニーの事を告げた。
「ハーマイオニーの事なんだが、どうすれば良いと思う?」
「どうって……クリスはハーマイオニーと仲直りしたいの?」
「それが……自分でも良く分からない。でもハグリッドの話しを聞いてから、ずっと考えているんだ。ハーマイオニーがルーピン先生の病気の事に気づいた事は良いとして、なんで――なんで、あんな喧嘩を吹っ掛けるような言い方をしたんだろうって」
「なんでって、僕らの関心を引くためだろう?それにハーマイオニーだ、素直に僕らに教えてくれるわけ無いじゃないか」
それを聞いて、ロンがきっぱりと言った。ロンは少しハーマイオニーに対して偏見がある様に見えたが、自分のペットがハーマイオニーのペットに食べられても、ハーマイオニーが少しも謝るそぶりを見せないのは、確かに素直ではないとクリスも思う。
だがロンの言う通り、ハーマイオニーが素直になれないだけという理由で、あんな関心の引き方をするだろうか。以前はあんなにルーピン先生との仲を応援してくれていたのに。それを「貴女より先生の事を知っているわ」だなんて。それがどうしてもクリスの心に引っかかっていた。
悩むクリスに、ハリーが何かを思い出したように話しかけた。
「クリス、あのね……1年生の頃、僕とクリスが喧嘩した時の事を覚えてる?」
「1年生の?ああ、あの時の事か。もちろん覚えているよ」