第22章 【愚か者】
ハリーの言葉を遮る様に、ハグリッドが言葉を挟んだ。
「お前さん達にもお前ぇさん達なりのやることがあった事は分かってる。ただこれだけは言わなきゃならねえ。お前ぇさん達なら、箒やラジオやネズミより友情を取るだろうと俺は思っていたんだ。現にハーマイオニーはブラックに襲われたお前ぇさんを心底心配しとったぞ、ロン。あの子の心は真っ直ぐだ。それなのに――」
「だったらそれ相応の態度をとるべきだ!!」
今まで黙って話を聞いていたクリスが怒鳴った。ロンもそうだと言わんばかりに頭をカッカさせている。
「クルックシャンクスがスキャバーズを食べてしまったら謝るべきだし、私が……私がルーピン先生に憧れているって知っていたらあんな知ったかぶりしない筈だ!!」
「――知ったかぶりって、例のルーピン先生の病気の事か?」
「え?」
「ええ?」
「ええーー?なんで?なんでハグリッドまで知っているんだ?」
「なんでもなにも、ホグワーツの先生なら誰もが知っている事だぞ?」
まるで何でもない事のように言うハグリッドに、3人は驚きを隠せなかった。
「な、なら何でハーマイオニーは私達に教えてくれなかったんだ?」
「それは……ルーピン先生には、ルーピン先生なりの事情があるんだ。でも、だからって先生全員が知っている事を、学校一の秀才のあの子が気づかないわけがないだろう」
確かに、ハーマイオニーの頭脳をもってすれば教職員全員が知っているルーピン先生の病気の事も気づかないはずがない。
でも……それなら尚の事、知っているなら教えてほしかった。ルーピン先生が病気で苦しんでいるのを、指をくわえて見ているのは何よりも辛い事だと、ハーマイオニーなら理解してくれたはずだ。
それから陽が落ちて暗くなると、ハグリッドは3人を城まで送ってくれた。クリスは胸に棘が刺さったような痛みを感じながら、一番星が夜空に輝く中グリイフィンドール寮まで戻って行った。