第20章 【チョコチップクッキー】
マクゴナガル先生が、ハリーのファイアボルトと一緒にクリスのラジオを没収してから1週間が過ぎた。その間、クリスはハーマイオニーと一言も口をきかなかった。ハリーもハーマイオニーに腹を立てていたが、ロンはそれ以上にハーマイオニーに腹を立てていた。怒り心頭に発したロンは、世界最高峰の箒をよくもバラバラにして、これはアズカバンの終身刑に値すると言って怒っていた。
逆にハーマイオニーは、絶対に間違った事はしていないと言う態度で、謝るどころかクリス達を避ける様になっていた。3人はきっと図書館にでも避難したんだろうと言って、謝ろうともしないハーマイオニーの悪口を、誰に気を遣うわけでもなく、おおっぴらに口にした。
それから年が明け、間もなくクリスマス休暇も終わり生徒達がホグワーツに戻って来ても、4人の関係は変わらなかった。それどころか時間が経つにつれ、溝が深まり、増々仲が悪くなる一方だった。まるで1年生の時に戻った様だった。
新学期が始まる少し前、クリスは史上最大級の緊張と戦っていた。ハリーから『忍びの地図』を借りて、ルーピン先生が自室にいる事は確認済みだったし、朝食の時に教職員テーブルに座っていたから、病気が治っていたのも確認済みだ。後はプレゼントを渡すだけだった。しかし――ここまで来て緊張が邪魔をして足が動かなくなった。それに、プレゼントを渡す時、何と言って渡せば良いのだろう。今まで面と向かって、誰かに何かを贈った事が無いクリスにとって、これは歴史上類まれなき任務だった。
「大丈夫だって。『はい、ルーピン先生。少し遅れましたがクリスマス・プレゼントです』って言って渡せば。向こうも『ありがとう』って言って受け取るさ」
「ロンは異性に何かあげた事が無いからそんな簡単に言えるんだろう。私の様なグラス・ハートの持ち主には異性に何かあげるだけでも緊張して胸がドキドキするんだ」
「ふ~ん。ところでマルフォイには何かあげた事は無いの?」
「ドラコは異性にカウントされない」
「はは、グラスハートが聞いてあきれるよ」
「これだよ」と言わんばかりに、ロンは肩をすくめた。