第11章 そんな言葉じゃあない
とあるノルスタジアⅡ
「おーいジョジョ!ジョジョったら!」
小学校の休み時間の教室で、ボールを持った男子が、大人しく本を読んでいる女子に声をかけた。
「なあジョジョ!」
あまりにしつこいため、女の子は不機嫌そうに本を閉じた。
「私をジョジョって呼ぶな」
「だってお前、由来なんて読み方ややこしやだからよお。お前“上条”って名字ならジョジョって読めるだろう?」
ニシシシと男子は無邪気な笑顔を向けた。
「で、何で私を困らせたいわけ?」
「これからよ、皆でドッチボールするんだよ。いいだろ!」
男子はボールを頭の上に高く上げた。
「お前見た目に限らず運動神経いいって聞いてるからよ。な、頼む!」
男子は手を合わせた。
女の子は口元が緩んで席から立ち上がった。
「じゃ、じゃあ…」
「おい。ソイツだけは誘うなよ」
教室の外にドッチボールをやると思われるメンバーが集まっていて見ていた。
「そいつは危ない奴だから、関わらない方がいいぜ」
「うちの親も言ってたわ。あまり深く関わるなって」
そんなことを何人もの子が言い出す。
「な、なんだよ。そんな言い方…!可哀想じゃ……」
「そういうことだよ。私に関われば危ない目に遭うから」
女の子はそう言い捨てて、教室から出た。
それをクスクス周りの子は笑ってみていた。
「おいどういうことだよ?!」
「お前は転校生だから知らねえだろうが、あいつ何度も名字が変わるんだよ。前は“上条”なんかじゃあなかったんだよ」
「以前は施設に引き取られていたって噂もあるわ」
「なんか悪いことでもして、親に捨てられたんじゃあないかって話もあるぜ」
「うちの親は、上条さんには関わるなって。親がいないから不気味だって。それより仲良くなれる子はいっぱいいるって」
「そういうこと。悪い奴は友達になれねえんだよ」
そんな会話を小耳に挟み、女の子は目元が暗いまま、廊下を歩いていた。
通った道は寒くなっていた。
期待なんてしちゃだめだ。
別に私を信用しなくていい。
だから私もあんたらを決して信用しない。
この先も……
由来の表情は怒りと憎しみで歪んでいた。
そして、どこか悲しそうだった。