第5章 渡る世間に鬼はなし
私達の家は、世間一般的には『普通』の家だと思います。
『普通』に両親の仲は良く。
『普通』に生活できる収入がある。
『普通』に親戚との交流があった。
でも、『普通』ではなかった事が1つだけありました。
それは
差別や偏見を持っている事。
一言で言えば簡単です。
しかし、それはとても大きな意味を広範囲で発揮します。
例えば、友人関係。
私が小学生の頃、確か低学年の時です。あるクラスメイトと仲良くなりました。
家族にその友人の話をすると、母はすぐに父と何か話し始めました。
それから数週間後、母は私に友人と別れるよう言ってきました。
理由を尋ねると、母は「えた・ひにん身分だから」と答えました。
当時の私がそれを理解できるはずもなく、親がすべての子供だったので、言われた通り、友人に別れを告げました。
もちろん、友人にも理由を尋ねられ、私は母に言われた事をそのまま伝えました。その子が酷く悲しい顔をした事をよく覚えています。
私は高学年になり、社会の授業で歴史を習い始めました。そこで私は初めて『えた・ひにん身分』について知りました。私がそれを知った時には、その子はもう転校していました。