第5章 死んだらキミに恋をする【一松】
お互い呆然としながら息を切らす。どちらからともなく、抱き締め合う。
おれ、最高に可愛いカノジョができちゃった……。幸せ借金が積み上がって、地獄から天国まで突き抜けそう……。
「桜……これからも顔見たい……」
「うん……地獄の合間にこっそり会おうね……」
また、甘い唇を重ねる。
その時、遠くから荒々しい足音が迫ってきた。
「おい! そこ! 何してる! ちゃんと乳首はちぎったのか!?」
ヤバイ。鬼が来た。
おれは慌てて起き上がって白装束を着る。
「桜は、これを着て!」
鬼の着ぐるみを拾うと、同じく起き上がった彼女に素早く被せた。
「え? でも」
「いいから! 早くおれの乳首をちぎって!」
鬼はあっという間におれたちの目の前まで来た。
「ほんとにいいの? 私がちぎられるはずなのに」
小声で話しかけてくる桜。
「いいから! 早く!」
鬼がおれたちを覗き込もうとする。
桜は、ぐっと唇を噛むと、思い切ったようにおれの乳首を引きちぎった。
「あーーーー!!!!」
おれは痛みで盛大に叫ぶ。
「なんだ、ちゃんとやってるじゃないか。サボらず、しっかりやるんだぞ」
鬼がやれやれと首を振る。
初めてできたカノジョを守るためだ。ヒヒッ、ゴミでクズなおれの乳首なんていくらでも犠牲にしてやるよ……。
再び生えてきた乳首を桜がまた容赦なくちぎった。
「あーーーー!! でも、やっぱり痛いーー!!」
エンドレスに地獄は続く。
でも、こんな苦しみの日々も、明日からは少し変わるはずだ。
だって、おれには可愛い桜がいる。
幸せを噛み締めながら、おれはカノジョに乳首をちぎられ続けた。
END