第10章 見てみなさい#
背筋がゾクゾクと戦慄き、ナカに一滴残らず欲望を流し込んだ直後…目の奥が眩む程の余韻に浸っていた最中だった。
「ぐぁっ……!?」
夢見心地で桃源郷に居座っていた俺を襲ったのは、首筋に感じた痛みとそこから溢れる生温かい何か。
驚いて目を見開くと、大きな口で俺の首に噛みついた彼女の顔がかろうじで視界の端に映った。
(な、なに…!?)
体の中から軋むような音がして、俺の首の肉が引き千切られる。
血飛沫が飛び散り、焼けるような痛みに全身が震えて視界が回る。
「ははっ、あんた、単純すぎでしょバッカみたい。結局あんたは私たちの餌なのよ。」
さっきまで嬌声ばかり響かせていた彼女が貼り付けの笑みを浮かべ、俺の顔を覗き込んだ。
「あ…ぐ、ぅ……」
「良いザマじゃない…ぬけぬけと私の演技に引っかかってくれて助かったわ。でも、あんたみたいにメスを嘗め切った自分勝手な男にはお仕置きね…?」
(まさか、そんな…大丈夫だと、思ったのに…)
血の気が引いて体を痙攣させる俺を嘲笑い、彼女の牙が迫る。
彼女の潮が伝っていた葉には、俺の血潮が代わりに流れて葉先から地面に滴り落ちた。
緩やかな風が向日葵畑に吹き、ガサガサと平和な音に世界が包まれる。
意識を失う数秒前、見上げた高く蒼い空に、俺の心は吸われたんだ――――