第4章 教えてあげない*
俺は彼女に訊きながら、心の中でどっしりと構えた。
だって、俺を選んで押し倒すぐらいなんだから…。
訊くまでも無いよなって。
俺を真っ直ぐ見つめた沙里さんは、フワリと微笑んで唇の端を上げた。
答えはもちろん…
「…ふふ。教えてあげない―――――」
「ええええ!!…って、あれ?」
バッ、と飛び起きた俺は慌てて周りを見渡した。
いつもと変わらない、俺の職場……
だけど人は全然いない。
暫く呆然としながら、股間に感じた違和感。
「律人君…?どうしたの大きな声出して?」
「あっ、沙里さん…!い、いや、何でもないです!」
現状を理解し始めた時、俺の声を聞きつけた沙里さんが俺の元に来て、心配そうに話しかけてくれる。
オフィスの時計は現在午後9時。
どうやら俺は残業中に寝てしまっていたようだ。
…おまけにエロい夢を見て。
夢で勃起なんて知られたら困るので、俺は体と机の距離をギリギリまで縮めた。
「そう。律人君も残業?」
「あ、はい…そうなんです。」
「大変だね。私は今終わったから、先に帰るね。」
「は、はい!お疲れ様です。」
「お疲れ。」
爽やかな笑顔で俺に手を振り、背を向けて去っていく沙里さん。
彼女のスカートの横部分が妙に膨れていたのは、きっと気のせいだろう――――――