第2章 伝説の忍が隣で悩んでいました(小太郎)
「(なぜ主はああなのだ?夏に蛍を見に夜に出かけようとなさったが捕まえては己に見せて、鈴虫を所望なされて差し出せば共に愛でようと誘われる・・・秋は紅葉狩りついでに芋や栗を集めよと命じられて集めれば焚火に放り込まれ食わせようとする。冬には雪見酒など誘われたぞ・・・)」
まるで子か孫扱い・・・いや、童同士の遊びか。
「(なんとかならぬものか・・・)」
そう哀愁を漂わせて声なき声で話すのは伝説の忍と名高い風魔小太郎その人である。
彼は北条氏政に仕えていて、孫の様に可愛がられているらしい。それが本人にしては不本意らしく、こうして愚痴っているのだが・・・
「よいではないか、いつも傍にいてくれる小太郎が・・・なんというか、かわいくてしかたないんだろう」
春之とはひょんなことから知り合い、友というにはこそばゆいが、それに近い間柄だとお互い思っている。武田のオカンは拒絶反応を起こしているが。
「(だが己は忍だ。)」
「お堅いなぁ・・・うちのオカンを思い出してみろ~」
な~才蔵~
「・・・春之様、バレてるとはいえ普通に話しかけてくるのはいかがかと・・・」
「(己と猿飛を一緒にするな)」
「おい、それは聞き捨てならぬぞ」
長の評判はどうでもいいが真田忍隊の評判は下げるな!
小太郎と才蔵が殺気立つが、春之はのほほんとしている。
「小太郎、一度氏政殿と話したことがある。忍とは何か」
殺気が消え、小太郎の意識がこちらへと向いた。
春之は庭を向いたまま茶をすすり、視線を空へと向けた。
「忍は道具、草より価値はなし、主の命にただ忠実で、逆らうことはなく、傀儡と同じ・・・」
けれど我らの忍は部下でありそれ以上に
友であり
親であり
兄弟であり
家族である