第92章 *My Home*〜紫原敦〜 request
香奈side
「ただいまー…」
しーん…と静まり返った家。
あ、そっか。
今日はお父さんとお母さんの出張が重なって、家には誰もいないんだった。
…ん?
あれ、待って…。
家には誰もいない、当然鍵は閉めてあるはず。
なのに今、鍵なくても開いた。
って事は…
「紫原くーん?家が隣だからって、何でいつもうちにいるのかなぁ?」
「あ、香奈ちんおかえり〜」
「いや、少しは反省してよ。」
リビングを見れば、そこにはおやつを食べる超高身長がいた。
紫原君とは、家が隣で部活も同じ。
そのせいか、仲良くなってくると、よく私の家に来るようになった。
しかもこういう不法侵入も度々ある。
「親がいる時はいいけどさ、不法侵入はやめてくれない?普通は犯罪だよ、それ。」
「えー、そうなの?」
無自覚かよ!
だけど、紫原君は何言ってもわかってくれない気がする。
結局、ため息を一つ吐いて諦めるしかなかった。
「つーか、不法侵入になるのも香奈ちんが帰ってくるの遅いからじゃないの〜?」
「まぁ…それも一理あるけどさ。」
珍しく正論で言い返してくる紫原君に、納得するしかなくなる。
「あんまり遅いから、心配したんだけど〜」
あ、心配してくれたんだ…意外。
「あ、ありがと…。」
ちょっと嬉しいな。
そう思うと同時に、心配させたという罪悪感も込み上げてきた。
「…だから、俺意外と帰るの禁止ー。もちろん一人もダメだから。」
「へ、あ、あの…」
「いいでしょ?」
そんな、ちょっと強引なお願いさえ、
「…うんっ」
どうしても断れない。
だって、その後の紫原君の、ちょっと照れた笑顔が好きだから。
*My Home*
家に帰ったら、
いつもあなたがいる。
これからも、毎日一緒にいたいな。