第26章 *鈍感彼氏*〜小堀浩志〜
香奈side
『ピピピ、ピピピ…』
「…三十九度…」
「かなり高いな…。頭痛い?」
「ううん、今のところは大丈夫。」
「そっか。」
今日は、火曜日。
私が自分の家にいるのは、熱を出してしまったからだ。
そして、彼氏の小堀君が学校を休んで看病に来てくれた。
私は、小堀君のそんな優しいところが好き。
「ありがとう、わざわざ来てくれて…」
「香奈は一人暮らしだから、余計に心配になったんだ。
…何か食べる?」
「ううん…。一緒にいて。」
「ああ。」
優しく撫でてくれる手も、私にだけ向ける笑顔も、大好き。
でも、ね。
漫画の読み過ぎかもしれないけど、少し期待しちゃうよ。
熱で、彼氏が看病してくれてて、家に二人きり…なんだもん。
キスくらいしたいな…なんて。
でも、優しい小堀君は全然気づいてくれない。
「頭痛くなったら言って。」
「うん…ありがと。」
二人きりなのに。
頭撫でてくれるだけで。
「…したい事ある?」
「…したい事?」
一瞬、戸惑った。
心を読まれた気がして。
でも多分、小堀君の言ってるのはゲームとかなんだろうな、と思い残念な気持ちになった。
したい事?…あるよ。
小堀君は、したくないの?
「…あのね」
「ん?」
「キス…して?」
だって、大好きなんだもん。
期待、しちゃうよ。
小堀君は少し驚いた顔をしてたけど、すぐにまたふわりと笑った。
「…いいよ。」
『チュッ』
*鈍感彼氏*
したいのは私だけだと思ってたけど、
本当は俺もしたかったんだって、
キスの後で教えてくれた。