第57章 学生の本業
「ヤベェ、普通に来週中間あるの忘れてた…!」
お好み焼きを手慣れた動きで四等分していた上鳴が、急にシリアス顔になり、ようやく重大な事実に気づいた。
「一味取れや」
「あぁ、ハイ。…ってオイ無視か!マジやばい、ちょっと高校の友達出来た嬉しさにかまけて勉強忘れてた…!」
「何だそれ、俺中間の範囲どこかなって聞いたろ」
「深晴、お前勉強してる?」
『強制的にやらされてる』
「アホだから?」
『しばくぞ。家主の関係で』
「バカなことには変わりねぇだろ」
『アホもバカも許さん、賢くないわけじゃないから』
「いや、でも中々に向語録謎すぎるラインナップだよな。「百戦錬磨」を「歴戦の戦士」とか言ったり、「同じ穴のムジナ」を「同じ穴のムカデ」って言ったり」
『ムカデ野郎は電気だよ』
「ムカデ野郎ってやめて、わさわさしてそうじゃん!」
「ワサワサしてんだろテメェ」
「してねぇし!何その動き、何してたらワサワサって効果音立てながら生き続けてくことになんの!?」
あっ、そういや。
なんて上鳴が何かを思い出したようにまた思わせぶりな事を口走り、斜めに座る向の皿にお好み焼きを置いた後、彼女の隣に座る切島の皿の上空にお好み焼きを保留した。
「……ん?俺にもくれよ」
「おまえら、昨日の映画でなんか変な感じに発展してたりしねぇよな?」
「は?そういうんじゃないって。他に2人いたし」
「あ、そうなん?じゃあアゲルー」
そう言いつつ、お好み焼きを切島の皿へ置かず、次第に上空へと召していく上鳴を見て、切島が「子どもかよ」と穏やかに諌める。
お好み焼きをふーふーと息を吹きかけて冷まし、口に運んだ向。
そんな彼女の顔を爆豪がジッと眺め。
ふと思った。
(………あ?)
彼女の表情に違和感を感じ、そのまま彼女を凝視したまま動かずいると、その視線に気づいた向と目が合った。
『………なに?』
「……。」
何かを言おうとして、口を閉じた爆豪は、向から視線を逸らし、一味をかけたお好み焼きを熱いまま口に頬張った。