第51章 君にお世話を焼かれたい
3体の脳無と、ヒーロー殺し出現によって一夜でパニックに陥ってしまった保須市。
暴動鎮圧直後、現在。
死亡・重傷者については無しと見られているが、軽傷者は50人以上に上り、まだ数が増えるだろうと予想されている。
エンデヴァーヒーロー事務所のサイドキック達に運ばれる形で緑谷、飯田、轟の三人は保須総合病院に訪れ、手当を受けた。
バタバタと忙しい病院内の病棟の一室。
相部屋に入院することとなった三人は、それぞれの職場体験監督者から三人の荷物を預かってくることとなっている向を、病院着に着替えて待っていた。
「…なんか、ドッと疲れが…すごく熱っぽい気もするし…」
「……筋肉疲労に加えて、怪我のせいで発熱しているんだろう。早く、眠れるなら鎮痛剤を飲んで眠った方がいいぞ緑谷くん」
「飯田、おまえもだろ。深晴は俺が起きて待っとくから、寝てろよ」
「いや、しかし!巻き込んだのは俺だ」
「1番の重傷者もおまえだ。いいから、寝てろ」
「巻き込んだといえば僕も…向さんと轟くん巻き込んだようなものだよね。二人が来てくれなかったら、どうなってたか…」
「二人の職場体験先はエンデヴァーヒーロー事務所だったんだな」
「そういえば、どうして向さんは轟くんより遅れて来たの?別行動だったとか?」
「いや、一緒に居たんだが…」
緑谷の隣のベット上。
上体だけ起こした轟が、急患の搬送応援に向かうため立ち去った看護師から渡されていた薬剤を眺め、今飲めと言われたものと、痛みが酷くなったら飲めと言われたものに怪我をしていない方の手で分類し始めた。
「実は今俺がしつこくし過ぎて、気まずい」
「「……え?」」
「メール見た後、深晴にも声かけてみたんだが、名前を呼んだだけで『あ、ちょっと今それどころじゃない』って言われた。だから俺一人でとりあえず向かった」
「ちょっと待ってそんな理由!?あの向さんに鬱陶しがられるって…え?しつこい轟くんって想像がつかなさ過ぎて…!」
「到着して、あぁヤベェなって思った。確実に深晴呼んでおくべきだった」
「そうだね、確実にね」
「でも結果として…向くんは怪我をせずに済んだ…。あのヒーロー殺しの口ぶりでは…彼女が戦っていたとしたら容赦なかっただろうからな」