第7章 何処に居る?
敦side
組合は何があったのか、来日してから数日で祖国に引き返した。
幸い鏡花も入社試験に合格し、横浜の街を守る事もできたのだが──唯1つ、問題があった。
「…菜生は何処にいる」
国木田の声には、社員の誰も答える事ができない。太宰すらも。
国木田も其れを分かっていて尚訊いてしまう様子で、質問せずには居られないようだった。
「菜生は何処だ」
何度目になるか解らない質問に、やっと太宰が口を開いた。
「そンなの…私が知りたいよ…」
其の声は掠れていて、太宰がどれ程菜生の不在を気に病んでいるかが解る。
──菜生さん、本当に何処に…ッ
菜生が戦闘に優れた能力を持っているのは太宰から話を聞いている。ポートマフィアでかなりの役職に就いていたようだし、それは疑う必要もないだろう。
然し、何故このタイミングで音信不通になったのか。
何故太宰にすら何も伝えず姿を消してしまったのか。
社内の空気は、今迄にないくらいに張り詰めたものになっていた。