第1章 事件発生前
遥は放課後の教室に1人―――――
自分の席にぼーっと座り無造作に消された黒板を見つめていた
「おーい。まだ誰か残ってんのか?」
そう言いながら入ってきたのは
担任で体育教師の如月凌(きさらぎ りょう)だった。
「おぉー高野か。何してんだ?」
いつものように如月は爽やかに聞いてくる。
「あ…先生っ」
ぼーっとしていた遥は我に返り如月に顔を向ける。
「教室に1人でなにしてたんだよ。何も用が無いなら早く帰れよー」
と如月は遥近づき頭にポンと手を乗せて言った。
「あ…すいません。ぼーっとしてて…」
遥がそう言いながら慌てて立ち、帰る支度をする。
「…なんかあったのか。言いづらいなら先生が聞くぞ」
そう優しく如月が言うと
慌てて遥は何でもないと答えた。
「何でもないわけ、ねーだろ。
俺が聞くから…ほら、言ってみ?」
そう如月が言い遥は帰りの支度をしていた途中で椅子に座り直した。
遥はぼーっとしていた原因は両親の死であることだと話した
「そっか…辛いよな。」
そう切なそうに如月は言い
「俺も実は親亡くしてんだよ。」
そう言った如月の言葉に遥は驚く。
「まぁ…亡くした理由は色々とあるんだけどさ、でもお前は辛いのにちゃんと学校に来てて偉いな!」
笑顔で如月が遥の頭をポンポンしながら言う。
遥は首を横に振りながら
「…そんなことないですよ」
と消えそうな声で言った。
「なんか辛くて吐き場所が無かったら俺にいつでも言っていいから」
この日を境に放課後の教室で2人はよく話し合うようになった。