第11章 帰る場所
「失礼致します。」
椿がそう言って部屋の中央に座る。
土井は山田の隣に腰を落ち着かせた。
いつもと違う彼女の雰囲気に、全員が粛然とする。
学園長が口を開いた。
「本来ならばこちらから出向かなければならないところ、御足労頂き申し訳ありません。」
「いえ、それには及びません。私がこうしたかったのですから。」
「ふむ……お話をさせて頂く前に、ちょっとよろしいでしょうか。」
学園長の言葉を合図に、先生方がありとあらゆるところを開け放つ。
障子の向こうに伊作と一、二年生。床下に三、四年生。天井裏に五、六年生。掛け軸の裏や、引き戸の外に隠れている者もいた。
「お前たち、盗み聞きとはいい度胸だな!!」
山田に怒られ退散しようとする生徒たちに椿が声をかける。
「どうかそのままで。皆にも聞いて欲しいですから。」
「オホン!…先生方。」
学園長が制すると、先生たちは元の位置に座り直した。
生徒たちも各々の場所で成り行きを見守る。
椿はその様子を確認すると話し始めた。
「皆様におかれましては、もうすでにご存知のことと思います。初めまして、竹森城城主、竹森隆影の娘、竹森椿にございます。この度は私の勝手な都合により大川平次渦正様始め、忍術学園の先生方、並びに生徒の皆様を危機に晒し、多大なご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳なく思っております。本当に、申し訳ありませんでした。」
椿は深々と頭を下げた。
彼女の改めての名乗りに、一同は諦めにも似た息を吐く。
「竹森城の椿姫様、どうか顔をお上げください。謝罪しなければならないのは、私の方です。知らなかったとは言え、あなた様のお命を危険に晒すことになったのは私の責任です。もう少し早く気づいていればと、悔いても悔やみきれません。加え、今までの非礼をお詫び致します。申し訳ありませんでした。」
学園長が手をつき頭を下げる。それにならい、先生方も頭を下げた。