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【忍たま乱太郎】かぐや姫

第9章 其が願いしもの



神室は椿の姿を見上げる。
包帯で巻かれたその姿に、胸が締め付けられる。

「しかし結果的に私がしたことで椿様のお命を危険に晒すことになってしまいました。どうか、この神室にその償いをさせてください!」
「!?」
「神室さん!?」

神室は小刀を抜くと自身の腹にあてがう。周りからは悲鳴が上がった。
愁は止めに入ろうとしたが、そこへ割り込んだ声に思わず足が止まる。
いや、動くことはできなかった。


「控えなさい!!神室!!」


聞いたことのない力強い声、それが目の前の少女のものだと理解するのに時が必要だった。
彼女は凛とした態度で神室を見据えている。

「隆光の…母上の願いを無下にするつもりか!お前はここで死んではならない。」

椿は神室の手から小刀を奪う。

「何を!?」
「死ぬのは…私だ!」

そう言い放つと、自身の髪を無造作にまとめ上げ、首の付け根から迷うことなく髪を断った。

その一連の流れはまるでスローモーションのようだった。刃が彼女の髪の一本一本を、流れるように裂いていく。

息を飲む光景。

「…椿様…」

「竹森椿は死んだ。これがあれば隆光も信じるでしょう。忍術学園には手を出すなと伝えなさい。隆光ならば、きっと父上を止めてくれる。神室、お前はこれからは隆光を守りなさい。私の最後の願いだ。」



『神室、椿をお願いします。それが私の願いです。』
『…葵様!!』



椿は切断した髪を神室に渡した。神室は震える手で大事そうにそれを胸に抱く。
椿の姿に、母葵の姿が重なる。神室は涙を流して泣いた。

「…御意。どうか、椿様はお幸せに。神室の願いでございます。」

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