第4章 一年は組学級会議
「まぁ、山田先生の息子さんでしたか。今お茶をお持ちしますね。」
「いえ、お構い無く。それよりも今度私とお茶を飲みに行きませんか?ぜひあなたをお誘いしたい店があります。」
流石と言うか、抜け目がないと言うか、利吉は初対面の彼女を口説いている。
よくもまあ父親の前でそのようなことが言えるな。聞かされるこっちの身にもなってみろ。
「それともどなたか特定のお相手でも?」
「え?いいえ、そんな、いませんけど。」
いくら利吉でも相手のいる女性は無理だろう……ん?今、なんて?……
「それだ!!」
思わず大声で叫んでしまったため、その場の誰もが驚いた顔で山田を見る。だが、今の証言は使える。この場に、は組がいたのは幸運だ。
「お前たち、今の話を聞いたか?」
「利吉さんとお茶飲みに行く話ですか?」
「お茶と言ったらお団子だよね。」
「お団子食べたーい!」
「だから、デートに行くってことでしょ。」
「えー!二人はお付き合いしてるのー?」
「じゃあ椿さんは山田先生の家にお嫁に行くんだ。」
「という事で、」
「おめでとうございまーす!」
食堂にげんこつの雨が降り注ぐ。頭を押さえて痛がる一年は組。
「話が飛び過ぎだ!バカモノ!よいか、耳を貸せ。」
山田はは組を集めると円陣を組み、何やら話し始めた。椿と利吉は訳がわからないと顔を見合わせる。
「…ともかく、あなたにお相手がいなかったのは幸運でした。ぜひ今度ご一緒させてください。」
「はい、そうですね、ぜひ。」
利吉は椿の笑顔に、学園に来る理由が増えたと感じた。
だが、ライバルは少なくないだろうな、例えば土井先生とか…この手の勘は一段と冴え渡る。
やがて、は組は山田の合図で元気に食堂を去って行った。
「あの、父上?」
「利吉ご苦労だったな。」
「?はぁ……忘れるところでした、父上。」
利吉は山田に耳打ちをする。最後に家に帰るよう付け加えた。
「では私はこのことを学園長へ報告して参ります。椿さん、またあなたに会いに来ます。」
「はい、楽しみにしてます。」
利吉は笑みを見せるとその場を離れた。
そしてその後、学園中に椿さんは恋人募集中という噂が広がった。
「だから!話が飛び過ぎだってーの!」