第3章 歌声
『あなたに会えないから、涙を堪えて空を見ています
遠く離れたあなたは今、月を見上げていますか
あなたへの想いは溢れてくる 言葉にすることができないくらい
私の心を映す天に浮かぶ月 強く願えば光輝く
お願い早く会えますように
声を聴かせて 月が欠けてしまう前に』
彼女は月に向かって歌っていた。その光景があまりにも綺麗で儚くて、目が離せなくなる。
ただ
彼女には想い人がいたんだ。
目の前が暗く、立っていられなくなる。
何故考えなかった。いや、考えたくなかった。
自分でも驚くくらい、私は彼女に惹かれていたんだ。
「………さて、戻りますかな。」
「山田先生?」
「学園長が仰った通り、彼女は忍でも間者でもなさそうだ。そうじゃなきゃ、よっぽど腕が立つんだろうな。」
山田の表情は晴々としていた。
土井は悟られないように、息を長く吐いた。