第35章 【空色】勘違いパンデミック
「……じゃぁ聞くけど!!」
少女は今理不尽に塗れていた
噛まれた理由
絡まれる原因は轟なのだと
思っていたからだ。
散々突っかかって来るのは
自分がただ邪魔だったからだと
だが
それを否定された今
何故噛まれなければならなかったのか
納得できなかった
ハイリは吠える
それはもうキャンキャンと
「なんで噛んだの!? いつも邪険にするじゃない!
突っかかって来るじゃないっ!」
生まれてこのかた噛まれた事なんて
二度しかない
目の前の男と
ここには居ない男
轟の時は随分と怒らせてしまった為だ
爆豪だってそうだと思っていた
恋敵としての自分への怒りが
そうさせたのだろうと
だからいつも
轟が居ない所では優しいのだと
今日、初めて噛まれた理由を考えて
そんな感じで纏まっていたというのに
こんなカミングアウトをされては
その全てが覆されてしまう
なぜ今日だったのか
全てはタイミング
真向から疑問をぶつけられ
少年がぐっと息を詰める
「ねぇってばっ!」
よじり、にじり
さぁ答えろと距離を詰める少女
爆豪だって年頃の少年だ
好きな女に距離を詰められて
更には告白を要求されるような言葉を突き付けられては
思考もままならない。
伸るか反るか
キレの良い脳内が拮抗する
少年が選択した答えは
幾重にも重ねられたオブラートに包まれていた。
「――ッてめぇが宣戦布告してきたからだろうがッ!
勝手に血道を上げてんじゃねぇっ!」
「血道…って……。」
言葉を受け取った少女は
固まった。
その意味を考えているのだろう
国語は得意じゃない
だが決して頭は悪くない少女
数秒意味を考えた後
閃いた!と顔を上げた
電球マークが確かに見えた
スッキリした表情が清々しい
もう、お気付きだろう
鬨の声とは烏の声だったのか
物悲しい鳴き声が教室内に響き渡るまであと5秒
「成程、だから私が気に入らないのね?」
絶対、分かってない
皆は言葉を失った
言葉を失えば手が出てしまう
例え才能マンとてまた然り
(わからせてやんよ…。)
どこか腹を据えた爆豪は
汗ばむ右手で少女のネクタイを掴み
引き寄せた。