第2章 【桜色】先天性世話焼き
~Side轟~
昔の夢を見た。
『嫌だよお母さん……僕
僕、お父さんみたいになりたくない
お母さんをいじめる人になんて、なりたくない』
母に縋って泣く、ただ弱かった頃の自分の記憶だ。
『…………
でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?
いいのよおまえは
血に囚われることにことなんかない。』
記憶の中の母はこんなに優しい声なのに
もうこの声を聞くことは叶わない。
『なりたい自分に、なっていいんだよ。』
優しい、けれど残酷な夢だ。
だけどそれも所詮は夢―――
「……………………」
――――目が覚めた途端、手の平に落ちた淡雪の様に溶けちまうんだ。