第1章 プロローグ
新たなヒーローの卵たちを迎えるめでたきこの日を心待ちにしていたのは、何も生徒だけではない。
雄英高校の会議室。
朝礼と銘打って開かれた会議は
最後の議題に差し掛かったところで
少しばかり怪しい雰囲気を醸し出していた。
「……楠梨ハイリ、まさかの普通科とはな。」
「わざわざ推薦を蹴ってヒーロー科を受験した意味はあったのかしら?」
「アイツの事だ、建前で一応受験したんでしょう…」
「あァ…ハイリならやりそうだなァ…。」
「まぁ、そう言うんじゃぁないよ
気遣い出来るようになったってことさね。
喜ばしい事じゃないか。」
物々しい雰囲気の中パサリとデスクに放られたファイルには
楠梨 ハイリ “個性” メディケーション
この文字から始まる形式ばった個性届と
亜麻色の髪と瞳を持つ少女の写真が一枚。
「とりあえず、
私としては彼女が雄英に進学してくれただけで満足と言ったところさ。
もちろん、『今は』だがね。」
果たしてその正体はネズミなのか犬なのか熊なのか
校長、根津の言葉を最後に会議は終わりを迎えた。