第2章 大晦日の狐
有言実行。
言ったからには、一人でも狐の行列を見に行ってやる。
意地もあって、一人で電車に乗り、一人で目的の駅で降りる。
一人で、スタート地点になる装束稲荷まで向かった。
そこには、観光客らしきカップルとかグループが沢山。
そんな中で、私は独り。
急激に淋しくなってきた。
年明けまで時間はまだあるけど、意地でここまで来たからには見ずには帰れない。
泣きそうになる前に、お参りする予定の稲荷神社を見に行った。
そこにも、人、人、人。
逃げるように人気の無い方向に歩く。
社と神楽殿の反対側。
稲荷神社らしい赤い鳥居が並んでいる道があった。
ゆっくりと、その道を進む。
奥には、小さな社と、その前にデカイ石。
立てられている看板には、願い石と書いてある。
持ち上げられたら、願い事が叶うって願掛けが出来るみたいだ。
石の両端に手を掛ける。
持ち上がるか不安だったけど、そんなに重くは無かった。
‘アキと仲直りしたい’
私の願い、叶うと良いな。
この場所の雰囲気のお陰なのか、願掛けが成功したお陰なのか、気持ちが落ち着いてきた。
年明けと同時に連絡しよう。
明けましておめでとうを一番に言いたい。
ついでに、行列の写真でも送って、来年は一緒に来たいってオネダリくらいさせて貰おう。
やる事を決めると視界が開けた。
それで、さっきまで気付いていなかった道を見付ける。
更に奥へ進めるらしい。
細い石の階段があって、その先まで行くと、終着点には洞穴みたいなものがあった。
説明書きによると、狐が棲んでる穴らしい。
そこに、ひょっこりと帰ってくるアキを想像して、また笑えるくらいには余裕が出来ていた。