第2章 中編
ユーリが目を覚ませば、既に日は高く昇っていた。
暫く茫然としていたが、ゆっくり身体を起こす。
「…っ」
起き上がった瞬間感じた身体の違和感。
下股からドロリと流れ落ちる感覚に、ユーリは身体を震わせると風呂場へと向かった。
身体の至る所が痛かった。
シャワーを浴びる時ふと鏡を見れば、たくさんの鬱血跡と噛み跡。
そして、消えている魔法陣。
「……」
ユーリはただただ茫然とシャワーを浴び終えて、宿を出る準備をした。
荷物を纏めてる時もどこか上の空で、気持ちの整理がまだ出来なかった。
ーーーそもそもおまえを選んだのが間違いだったんだ。
脳内で何度も響き渡るその言葉。
「…どうして…」
ユーリは宿を出ると、フラフラと歩きだす。
ユーリはローが何かを隠していると、直感的に感じていた。
だけどそれが何なのか教えてくれなかったという事は、それだけ信用されていなかったのだろうか。
結局、最初から最後まで、ローが何を考えているのか分からなかった。
頑張って歩み寄ろうとしてきたが、私のしたことは全て無駄だったんだろうか。
ローはまた最初から礼拝堂巡りをしなければならないのか。
もしそうならそれで、申し訳なかった。
ーーーあぁ、本当に私は、迷惑しかかけていないのか
ユーリはふと歩みを止めて、物思いに耽っていた。
そもそもユーリを強制的に選んだのはローであって、勝手に契約破棄をしたのもローだ。
本来であればユーリが気にする必要はない。
だけどユーリは、後悔の念で押しつぶされそうだった。
もっと私に魔力があれば、そう何度も思っていた。
もっと彼の役に立ちたかった。
やっと自分の居場所を見つけれたと思ったのに。
そこまで考えて、ユーリはハッとした。
「…私は、どこへ帰ればいいのだろう」
魔法学校へは、もう帰れない。そもそも杖に選ばれなければ、あそこにいても仕方ないのだ。
昔住んでいた家は放置していたので、誰かに占拠されてるか、もう壊されている可能性が高い。
「ははっ、私……帰る場所ないや」
自称気味に笑ったユーリ。
その瞳からは、一筋の涙が流れていった。