第3章 後編
世界は平和になり、季節はいつのまにか春になった。
魔法学校はもう必要なくなったが、卒業と言う肩書だけでも欲しいと、残った生徒は多かった。
因みに魔物が消滅したと同時に、魔力と言う概念も消えてしまった。
魔法が使えなくなりつまらないと言う生徒もいたが、なくなってしまったものは仕方ない。
世界は、新しい時代へと入ろうとしているのだ。
「今日から新学期が始まる。君たちは3年生になったんだから、1年生の手本となるよう勉学に励みたまえ」
教団に立つ先生を、ユーリはぼんやりとした表情で見ていた。
…そう、ユーリは生きていたのだ。
気が付けば森の中で倒れており、状況を理解するまでに時間が掛かった。
そして心の整理がつかないまま、彼女はこの学校へと戻って来た。
帰る場所がないユーリは、魔法がなくなった事実を知り、再びここへ戻ることにしたのだ。
母が命と引き換えに通わせてくれたこの学校。
せめて卒業はしたいと思った。
「先生は来月転勤になるから、君たちの新しい担任を紹介する」
だげどユーリの心は、何時までもぽっかりと穴が開いたように抜け殻となっていた。
ただ毎日同じ日々を淡々とこなしていく。
そんなユーリを気味悪がって、近寄ってくる生徒はいなかった。
結局自分だけが生き残ってしまったことに、ユーリの心は何時までも整理がつかないままだった。
当然、あの後あの小屋へと向かったが、そこにはローもルフィもいなかった。
ローがいなくなったこの世界で、私が生きる意味は何だろうか。
本当は、あの場所で死にたかった。
そしてもし天国と言う場所があるのならば、そこでローと再会することが出来たかもしれないのに。
ユーリは深くため息を吐いた。
何度同じことを考えても、結果は変わらない。
先生の言葉など耳に入っていないユーリは、窓側の席なのをいいことに、外の景色をぼんやりと見ていた。