第3章 後編
ユーリが泣き続けてどれくらい経っただろうか。
辺りはすっかり闇に包まれて、微かに魔物の気配を感じた。
ユーリはゆっくり起き上がると、上空を仰ぐ。
そこには、綺麗な満月が浮かんでいた。
…こんな事したら、ローに怒られるかもしれないけど
ユーリの身体は宙に浮かび、遥か上空へ舞い上がった。
美しい月明かりが彼女を照らす。
彼女の瞳は、もう赤く染まっていなかった。
…ローから貰ったこの命、無駄にはしないから
ユーリは両手をかざすと、巨大な青い魔法陣を描いた。
落ちこぼれだった私に、居場所をくれた。命をくれた。
だから私にも、ローが守り続けたこの世界を、守らせて欲しい。
「…ありがとう。そして、ごめんなさい」
ユーリが静かにそう呟くと、青い魔法陣が光り、世界を包み込んだ。
幻想的なその光はオーロラのようで、世界中の魔物を消滅させた。
…あぁ、綺麗だ
魔力を使い果たしたユーリは、上空を仰ぎながらゆっくりと落ちていく。
幻想的な青い光は、まるでローの瞳のようだった。
ボロボロに朽ちていく私とは正反対の美しさ。
ユーリは口元にそっと笑みを浮かべると、最後までその青い光を見ていた。
ーーー駄目だっ!
ユーリが意識を失おうとした瞬間、誰かがそう叫んでいた。