【S】Moebius Ring~目覚めたら執事!?~
第5章 捜査開始
櫻「もしかして、顔見知りの犯行…?」
松「そもそも、お嬢様の部屋に出入りできる人物なんて限られてますからね」
そう。そこなんだよ。
屋敷広しと言えど、お嬢様の自室はまた別格。屋敷に出入りするためのセキュリティーレベルが高いので、邸内に入ってしまえば自由に出歩けるのだが…なんせ世界の北条家のお嬢様。しかもどうやら美羽がこの家の跡取りらしく、その自室に入れる人間はかなり制限されている。
松「わざわざそんなリスク犯してまで部屋に侵入して、指輪ひとつって話もないですよねぇ…」
櫻「だよねぇ…」
そう。紛失しているのがその指輪ひとつだけ、というのがやっぱり腑に落ちない。アクセサリー類をほとんど身につけないとはいえ、やはり名家のお嬢様。状況に応じた最低限の貴金属は当然所有している。そしてもちろん、すべてが高級品。中には目玉が飛び出るような値段のものだってある。
それなのに
なぜその指輪だけを?
いや、それだって決して安物ではないのだが、いかんせん、この部屋の中にあるものとだけ比べたって、あまりに…お手頃すぎる。俺の給料でも買える程度だし。あ。お手軽には買えないよ?頑張った感すんごくあるくらいのお値段ですけども。
松「…犯人、バカなんすかね?」
櫻「ぶっ」
笑わせんなっ。
ま、確かにバカだよ。人のものに手を出すこと自体がすでに。そして何を血迷ったのか、天下の北条家財閥のご令嬢の、それもよりによって今一番大事なものを盗むなんて…。
櫻「てか、大バカだな」
松「ですね(笑)」
そう。そして何より、こんな優秀な探偵が捜査し始めてしまったのだから。運がなさ過ぎて同情の念すら覚えるね、その犯人に。