第2章 砂漠の月71~150
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放課後、元就が市を捕まえてどこかへ引っ張って行くのを見送り、晴久は自分の荷物を持つと昇降口へ向かう。
LINEで元就から来た確信に近い予想が当たりなら、月子は自分から言い出せずに考え倦ねて晴久を避けているはずだ。
「気にせず言ってきてくれるまでは、まだかかるか……」
不安なことは小さくても言って欲しいと願うが、月子の性格を考えれば直ぐには無理かと苦笑しながら近づいてくる気配に意識を向ける。
俯いて落ち込んだように歩く姿は憂いを含み可愛らしい印象を抑えて美しくも見える。すれ違う男子生徒がその姿を見て意識を奪われるのを、晴久は苦々しく思いながらその姿に近づく。
「月子」
名前を呼べば俯いていた顔が勢いよく上がり、次いで気まずそうな表情で再び俯いた。視線を合わせて貰えないことが少しさびしいと思いながらも、晴久は月子の手を取る。逃げられないのなら、未だ整理はつかずとも離れる気はないということだろうと解釈して、そのまま手を引くと靴を変えて外に出る。
言葉がないまま帰路を辿り、晴久は自室に月子を連れて来ると自分の荷物を投げ出し、月子の荷物をそっと隅に置いてから抱き上げてベッドに座り膝に乗せる。
顔を覗き込むときゅっと目を閉じたまま、まるで断罪を待つかのような表情で固まっている。
「月子、大丈夫だから溜め込まず吐き出せ」
頭を撫で、頬を撫で、顔を上げさせて視線を絡ませた晴久が言えば、目に涙を溜めた月子はフルフルと小さく首を振る。その振動でポロリと雫が零れ、晴久は目尻に口付けるとぺろりと零れたそれを舐めとる。
月子は擽ったに首を竦めると間近にある晴久の目を見て、ぽろぽろと涙を零し始める。
「小さな不安でも言ってくれって言っただろ? 抱えるな。嫌いになんてならねぇから」
「……なんで、この間、女の人と一緒に歩いてたの?」
「あー……言い訳みたいに聞こえるだろうけど、事実だけ言うと、逆ナンされたけど断って移動しようとしたのにしつこく追いかけられた。女だし、乱暴には出来ねぇから撒こうとしたんだがなかなかしつこくてな」
「……なんで、兄さんと二人、だったの?」
「それは……まぁ、いいか。驚かせたかったんだけだし」