第2章 砂漠の月71~150
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晴久はだんまりになった月子と共に入浴に使った道具や着替えを置くために部屋に戻っていた。
珍しくむっつりとした表情で荷物を整理している月子を眺め、晴久は早々に解決すべく月子を呼ぶとベッドに座り膝に抱き上げる。
目を合そうとせずに俯く月子に困惑し、頬に手を当てて上を向く様に促すと素直に上がった顔は涙を溜めて悔しそうな表情で余計に困惑する。
「月子? 俺、何かやったか?」
「してない……」
「じゃあ、なんでそんな顔してるんだ?」
「……自分に、腹が立っただけ」
頬に当てられた手を振り解くように首を横に振った月子は、手が離れるとそのまま晴久に抱き着いて首筋に顔を埋める。
拗ねたような、泣きそうな、そんな声で返される言葉に首を傾げながらそんな月子を抱き留めると、晴久はあやすように背を撫でて無言で続く言葉を待つ。
月子は暫く晴久に甘えるように擦り寄っていたが、小さく息を吐くと観念したように気持ちを吐露する。
「さっき、綺麗な女の人に言い寄られてて……」
「風呂ん時か……あの女、綺麗だったか?」
「……晴久さん、興味ないって態度で示してるのに諦めないあの女の人も嫌だったけど、ちゃんと、私だけって示してくれてるのに嫉妬して、あんなみっともない私、嫌い……」
「なるほどなぁ……でも、それ俺も同じだぞ?」
「え?」
晴久は月子を待っている間に声を掛けて来ていたはずの女性を思い出そうとするが、そもそもまともに視界に収めても居なかったので顔どころか服装や声も覚えがなく首を傾げる。
月子はそんな晴久をちらりと見上げぼそぼそと続きを喋った月子は、最後には自己嫌悪だという表情で再びきつく晴久に抱き着く。
晴久はそんな月子の仕草が可愛く、嫉妬して貰えたことに頬を緩めながら自分の首筋に埋められている顔をそのままにその頭に頬をすり寄せながら言う。
思ってもみなかった言葉を聞いたらしい月子は、思わずという風に頭をあげてタッチの差で頭を避けて月子を見下ろした晴久と見つめ合う。
晴久は悪戯が成功した子供の様な表情をして月子を見ると、唇を寄せその額に口付ける。