第14章 歪な恋心
『…そんなに思い詰めてたなんて知らなかった』
思い詰めてなんていない。
ただずっと、漠然とした不安が心に根を張っていただけだ。
いつか、彼女を失う。
彼女を手に入れたその日から、毎日思わない日はないほどに、その将来を恐れて、その運命に怯えて。
彼女を奪いそうな人間や、危ない出来事を可能な限り身体を酷使して遠ざけた。
自分がそれで煙たがられても、孤立しても、怪我をしても、眠れなくても、どうだってよかった。
『……大丈夫、勝手にいなくなったりしないよ』
大丈夫、と繰り返す彼女。
その優しい言葉がどうしようもなく愛しくて、そんな言葉を何度も言わせてしまう自分が情けなくなる。
ガラスの向こうに彼女を見ていた時。
自分は確かに、つまらなさそうに日々を過ごす彼女に、この世界のいろんなことを教えてあげたいと思っていたはず。
そんなにつまらないものばかりじゃないよ。
家族がいなくたって。
友達なんかいなくたって。
生きていれば、いつか、面白いものに出会えるから。
そう、教えてやりたかった。
一番最初の願いは、ただそれだけだった。
なのに、彼女と視線を通わせて、彼女と言葉を交わすようになって。
気づけば、いつからか。
自分は彼女に求めるばかりで。
ところどころ穴が空いたままの彼女の心を、埋めるどころか、全て自分のものにしようとすることだけ考えた。
(………オレはいつから)
いつからこんなに
つまらない男に成り下がったんだろう