第1章 数学教師×さくらい先生.
櫻井先生は、大人だ。
「お前さ本当に反省してんの?」
大人で、クールで、ドライで。
生徒のこととか本当は興味なくて。
親にも生徒にも人気があって、いつも笑顔で授業してるけど、
本当はぜんっぜん興味ない。
腹黒い。
私は気付いてる。
『してない』
先生は呆れた顔でため息をつくと、手に持ったままだった私の携帯を、机の上に置いた。
「それじゃ返せねえって。ちゃんと反省した、もうしませんって言って貰わないと。携帯返して欲しくないの?」
今日の数Ⅰの授業中、私の携帯が盛大に鳴って、櫻井先生に没収された。
うちの学校は携帯持ち込み禁止で、バレると没収されて、放課後こうやって説教される。
正直私は、櫻井先生が苦手だ。
何を考えているのかわからない。
周りの子は皆、櫻井先生は優しいし、ぜんぜん怒らないし、王子様みたいでかっこいいとか言ってるけど、
私はそういう表面的なところが苦手だった。
今だって、「反省してる」って言葉だけとっとと言わせて、私と、生徒と深くかかわりあいたくないって思ってる、
そういう態度が透けて見えるところに、ムカついてる。