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小話【気象系BL短編集】

第37章 別つまで(NとM)



side.M

パソコンで作業をするオレの首に、後から手が回された。
普通のソファなんだから、隣にくれば良いのに。
首元の冷やっこい感触に、心地好さを感じつつそう思った。
作業のペースが若干上がった気がした。言わないけど。




「オレ、湯たんぽとかカイロの替わり?」


問いへの答えなのか、ニノが掌全体で首に触れてくる。
その冷たさに、思わず首を竦めた。この冷え症め。
丁度キリの良いところだったから、手を止めてパソコンをスリープにする。
暗くなった画面に映る姿が、ちょっとホラーみたいだ。


「潤くん、終わったの?」

「そんなとこ。それより、ほら、こっち」


ぽんぽんとソファを叩けば、意外にもすんなり隣に座った。
それからニノの手を取り、きゅっと指を絡めて握る。
温度差があるだけ、繋いでいる感覚も強くなる。

こいつはちゃんといるんだなぁ。
らしくもなく、そんなことが浮かんだ。


「なーに?Jってば寂しくなってんの」


からかうような笑い方と、わざとらしい流し目。
部屋着で体育座りしてる癖に、やけに艶めかしく見えた。
ホント、こういうとこ怖い。というか恐ろしい。

やっぱ盗られたりするかな?

常日頃からある不安が、ほんの少し顔を出す。
邪魔なソレを振り払いたくて、握った手に力を込めた。


「絶対、オレから離れんなよ」

「……どうかしたの。そんないきなり」

「いいから」


想像以上にマジな声音に、自分でも驚いた。
気遣わしげな色の混じった瞳に、何となく申し訳なさを感じる。
二人きりなのに、この妙な空気。


「心配しなくても、離れないって。今更でしょ」


ニノが、ニノから、手を強く握ってきた。
そんな些細なことで、心強さすら感じられる。
我ながら現金だ。そう呆れつつも、頬は緩んでしまう。


この何でもない時間が、続けばいい。
凭れかかってきた温もりに、確かに安心していた。





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