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小話【気象系BL短編集】

第32章 別つまで(OとN)



side.N


大野さんの脚の間に座って、ゲームをしていた。
気付けば、寝てしまったんだろう。俺の肩に顎がのっかっている。
さらさらとした髪が偶に頬に触れるのも心地好い。
でも、つまんない。


「おーのさん。ねーえ、寝てんの?」


聞こえていないだろうから、聞こえない音量で言った。
別に起こしたい訳でも、起きてほしい訳でもない。
ただ、何となく話しかけてみたかっただけ。


「……ワタシは思うんですよ、大野さん?」

ゲームはキリの良いところだった。
俺はふと思いついて、前々から燻っていたことを言うことにした。

一般的に俺たちは、祝福されない。歓迎されない。
それについて俺だけなら看過出来る。けども、このひとが関わるとなると無理だ。
凡俗に悪く言われてイイようなひとじゃないもの。

でも、それでも、別れるという選択肢なんて存在しない。
俺もこのひとも離れて生きてける筈が無い。
だから、かな。短絡的なんだろうけど、終わりを思い描く。


「何か起きたら、一緒に死んでくださいね……?」

トーンを変えないよう心掛けたが、語尾が震えてる。
しくじっちゃったなぁ。軽いノリで言いたかったのに。

肩を竦めるのと同時、お腹に回されてた腕に力が入った。
俺にとっては嫌なタイミングだ。
自業自得だけれど、どうやら起こしてしまったらしい。


「おはよ。起こしちゃったね、ごめん」


いつも通りを装って言う。
答えの代わりのように、抱く力がぎゅっと強くなる。
首筋に唇が這って、時折食まれる。あぁ、もどかしい。


「ねぇ、何か言ってよ。聞こえてたんでしょ?」

「……んー、じゃあ、勿論」


駄目だ、このひと。
いくら俺が察するのに長けてるといえど、限度があるんだから。
ホントは何が何でも分かりたいけど。分かってたいけど。


「にの?やっぱ、ダメ?」

「だから、何が」

「一緒に死んでってヤツ。嬉しかったんだけど」

「………へぇ、そうですか。じゃ、決まりですね」


断定の響きのする声音は、ほの昏い色が滲んでいた。
あんただって、大概、病的じゃないですか。
そんな薄暗い安心感が、俺の胸を満たしていく。

死んでも愛してる。きっと、そう。

強引に首を後ろへ曲げ、大野さんにキスを仕掛けた。
だって、こうして生きてるもの。愉しまなきゃ勿体ない。





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