第28章 掌の上なら懇願
side.O
そっと手を掬われ、掌にキスをされた。
妙に真剣な感じだから言えないけれど、悪い気分じゃない。
寧ろ、逆だ。
「んふふ、やっぱ絵になるね」
「そう?ありがと」
松潤はニヤリと笑って、でも、それがヘンに見えた。
いつも通り余裕があって、カッコよくて、かわいいのに。
何かが違う、とはっきり俺は気付いた。その正体は分からないけど。
ぼんやり考えてたら、潤が俺の手を自分の頬にあてた。
すり、と擦り寄るのが猫みたいで、かわいい。
けれど、伏せられた目は不安そうに揺れ、迷子みたいだ。
言いたいことがあるなら、言ってもらおうかな。
そう思って、俺は黙って好きなようにさせることにした。
「ねぇ、いつか……閉じ込めて、いい?」
くしゃりと笑った顔は、泣いてる風だった。心は泣いてるんだろうなぁ。
俺は、きっと、そうさせない為なら色々と出来る。よくないことも出来ると思う。
まずは安心してほしいから、大丈夫だよって気持ちで笑いかける。
「お前がいればね?余所見したら、ゆるさないけど」
視線を合わせて頷いたら、やっと松潤がキレイに笑う。
その笑顔は自分しか見られないから、嬉しくてしょうがなかった。
沢山の仕事をさせてもらってるのは、ありがたいことだって分かってる。
だから暫くの間は叶えてやれないし、叶えさせるつもりも無い。
でも、いつか、そのときが来たら。
俺は喜んで閉じ込められるだろうな。檻でも何にでも。
だって、そしたら、コイツはもっと俺のことだけ見る。
俺は今みたいに色んなひとに妬かないし。
ずっとずっと幸せになれるもんね。凄く、たのしみだ。