第20章 知らずとも大丈夫
side.O
俺はアイツのことで知らないことの方が多い。
分からないことも多い。
ちゃんとした理由は聞いてないけど、俺を選んだってことが一番の大切だ。
あ、分かんない。
そう思ったことを吐き出して、話をして、分かることはある。
分からないことだってある。けど、大丈夫って言うから安心していられる。
どこが好きかって聞けないでいるし、俺も聞かれたら困る。
多分、とても嫌なとこが無いから付き合ってるんじゃないかな。どうだろ。
お互いに邪魔されたくないことがはっきりしてるし。
「さっきから百面相してんね」
「ん」
覗き込んでくる顔は相変わらず綺麗だ。
短く返事をしたら、肩に腕を回されてドキっとした。ふわっといい匂いがする。
こういうとこがモテるんだろうなぁって毎回のように思う。
怒られるから言わないけど。
「なぁに?何か面白いことでもあったの」
「やっぱお前のこと、よく分かんねぇなって考えてた」
一瞬ぽかんとして、それからフフって笑い声。
こうやって笑うと少し幼く見えて可愛い。怒るから言わないんだけどねぇ。
「オレも大野さんのこと完全に理解してないよ。それで良いじゃない」
そう言って、また楽しそうに笑った。
これが良いんだって思わせてくれるから助かるなぁ。
ヘンなとこで考えてないで、一緒に何かしようかなって考えられる。
「お前のそういうのマジで好きだ」
「オレもそう言ってくれるとこ好きだよ?」
何だか胸がいっぱいになって。むずむずして。
それも悪くないって思うから、俺の恋人はホントに凄い。
俺にはもったいないくらいだけど、誰にも渡さない。
そういうこと言ったら、びっくりするかな?
そんな顔も見てみたいよな。