第19章 憧れとそれから
side.M
「ちょっと頭冷やしたい」
そう言って帰ってく背中を見て、後悔。
言いすぎたとは思わない。言葉を選ぶべきだったとは思う。
ニノの良さを知ってるのはオレだって、熱くなりすぎちゃった。
自然体というか、そういう空気が売りだって分かってはいるんだけど。
でも、だけど、だってさ。
「……オレも、頭冷やそ」
コップの残りを飲みほせば、コーヒーはすっかり冷えていた。
それから時計を見て、また後悔。質に重きを置くべきだったなって。
ただ長く話せば良いなんて、そんなわけが無い。
続きは明日にしよう。そう考えて、肩の力を抜く。
ぶつかるのを怖がっても仕方ない。好きなヤツが相手でも。
それを変えたら、みんなダメになると思うから。
積み上げてきたものが、崩れるのは一瞬だ。だから、手は抜けない。
こういうときもある。こんなときばかりじゃ気が滅入るけど。
けど、オレはきっと明日も同じように言うんだと思う。
ニノは、こんなものじゃないって。
今も、昔も思ってる。多分これからも、そう思ってくんだ。