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小話【気象系BL短編集】

第101章 悔いる道理が何処に在る



side.S

尾を引く快感の余韻が、心地好い怠さを連れてくる。
同時に靄がかってた頭に、理性的思考も戻ってきた。

あぁ、はずかしい。

ゆっくりと色と輪郭を取り戻す視界で、自分の手が握られるのを認める。
まだ余裕の無いオレには、そんな接触にすら心臓が跳ねるのだった。
お互いの荒い呼吸音、そしてそれを整える息遣い。
羞恥をはっきり意識してしまうけれど、快い空間だと思う。


「しょーくん、平気か」

「うん……へいき」


間延びした呼びかけと共に、手の甲を指で擽られる。
ぼんやりとした心地のまま、どうにか顔を上げて目を合わす。
すると、どうだろう。自然な動作で膝枕をされた。

見上げた表情は、どこまでも穏やかだ。
食らい尽かさんと貪っていたとは、とても思えないくらいに。


オレの方が負担がかかるから、加減してるのは何となく分かる。
もし逆だとしたら、オレだってそうするだろう。
けれど、不意に考えてしまう。
ホントは、もっと、したいことがあるんじゃないかって。
甘やかしたい性分だから、こういうことで我慢はさせたくない。
が、実際問題、体を考慮する必要があるのも分かっている。


「……ままならない、なぁ」

「ん、何が?」

「んー……智くん、物足りなくないかなぁ、とか」

「すげぇ満足してっぞ。翔くんは?」

「オレはねぇ、そりゃ大満足なんだけど。けどさぁ、」


あ、何を喋っちゃってんだ。
甘い声に促されるがまま、ぽろぽろ本音が零れてしまった。
堪らず、額を智くんの脚にくっつけた。絶対、赤くなってる。
くす、と笑うのが聞こえ、何だか据わりがよろしくない。


「んふふ、ソレ、おねだりってこと?もっかい、する?」


頭上から、悪魔の囁きが降ってくる。狡いなぁ、本当。
辛うじて疑問符がついてるけど、ほぼ決めつけてんじゃん。

だめになっちゃう。そう分かっててなお、欲してしまう。
与えられれば与えられるだけ、オレは欲張りになっていく。
だけど、これで、あなたに染まったというのなら。
たとえ浅ましいと詰られたとて、後悔など微塵も無い。


「………智くんを、もっと、オレにくれる?」


意図的に色を滲ませ、微笑んだ。
何も考えず、形振り構わず。あなたの愛に溺れよう。
あなたの為の男は、オレしかいないのだから。






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