第96章 その部屋に光は差さない
side.M
「子供扱いなんて、一度だってするかよ」
「オレが好きだって言っても、ニノは頷くだけだもんな」
「悪かったよ。オレに付合わせて、縛ってさぁ」
「分かった。分かったから。その口、閉じてくれる?」
誰かに操られるかのように、口が動いた。
一旦言ってしまえば、底から沸々と怒りが溢れてくる。
いや、怒ってるんじゃない。
悲しくて、遣る瀬無くて、自棄になってんだろうなぁ。
小言が多いだろうっていう自覚はあった。
ついつい世話を焼いちゃったり。
ニノが鬱陶しがるのも、無理はない。
でも、オレの愛し方はそういうモノなんだもの。
仕方ないと考えたって、溜飲を下げられない。
オレの愛は、微塵も伝わってないってことだから。
──────もう、いいや。
「ッちょ、待って!潤く、ねぇ!!」
「ゴメン。聞けないから黙って。舌、噛むよ」
華奢な体を担ぎ上げ、ベッドに放り出す。
即座に逃げようとするのを、上から伸し掛かって止めた。
滅茶苦茶にしよう。嫌われて、憎まれて、それでいい。
消えることの無い傷を付けてしまえ。
罅の入った容器じゃあ、いくら注いだって満ちやしない。
けどニノは器じゃないし、頭のいい人間だし。
それなら、骨身に沁みるまで。嫌、と言うほどに。
オレがどれだけ愛してるか教えよう。それでいっか。
別に、応えてくれなくて良い。伝わらなくても、いい。
無くなるかも分からない、ニノへの愛情を。
全て吐き出して、”無かったこと”にしたくなった。
「なぁ、カズ。愛してる。愛してた、よ」
ただそれだけ、だなんて。どの口が言うんだろうね。