第11章 天邪鬼に小悪魔
side.M
膝枕をしながら、柔らかな髪を指で透いていた。
珍しく大野さんが甘えてるから、ふと思いついて聞いてみたくなった。
「大野さんはオレのだよね?」
「じゃないの?」
さも当然という表情と言葉に、思わずにやけそうになる。
くすぐったいような心地と、優越感。
このひとはオレので、オレはこのひとのもの。それが、とてつもなく嬉しい。
「ふふ、好きだよ」
「んなの当たり前だろ」
偶に見せる、言ってしまえば傲慢なところが堪らなく愛しい。
きっと、そういうあなただから好きになったんだろうね。
芯が強くて頑固なとこもあるけど、いつも優しい自慢のリーダーだ。
最近は、オレの恋人カッコいいでしょ、みたいなのもある。
「大野さんはオレのことどう思ってんの」
そう問いかけたのは、出来心みたいなものだ。
オレ自身そういうのが好きなのもあって、大体言葉にするのはオレから。
だから、言われてみたくなった。どういう風に言うのかなっていう好奇心もあるし。
「……それ、いる?」
平坦な声音からは特に何も読み取れない。
一瞬、怒らせたかなと不安が過ったけど、それは無い筈だ。
だったら、もうひと押し。
「偶には聞きたいの、ダメ?」
ちら、と視線だけを動かして、大野さんが意味ありげにオレの手を取る。
それに見蕩れていると、指に鋭い痛みが走った。
左手の、薬指。
「いッた!」
確認してみれば、指の付け根の辺りに歯形がついていた。
目を白黒させるオレを見て、大野さんはくすくすと楽しそうに笑ってる。
割とマジで痛いんだけど。うん、いや、いいんだけどね。
「俺以外にこういうことされんなよ……なぁ、潤?」
その甘い響きに、かっと顔に熱が集まるのを感じた。
つまり、この噛み痕は、そういうことで。
赤くなった顔を覆いつつ、大好きだなと思っちゃったので。
きっと、もう重症だ。