第83章 その意味を知らずに
無事に内定が出た松潤に、何かお祝いを買おうと考えた。
そのとき、ふと浮かんだのが、いつか見た高いスリーピース。
今でもポンと買えない値段だから、代わりにちょっと良い小物はどうだろう。
ハンカチとかなら、ある程度は持ってて困らないし。
それに、そういう趣味が出るものって、贈ってみたいじゃない。
相手の生活にひっそりと自分の色が出せるみたいで。
そう、オレは一つ下の後輩に、恋をしているんだ。
ずっと前から、それこそ出会ってすぐのときから。
松潤は何とも思ってないだろうし、先輩と思われてたらイイトコだけど。
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サイズは知ってるから靴下もアリかなぁ、とか。
あれから考えが全く纏まらなくて、現物を見てから決めることにした。
そんなこんなで、デパートにやってきた。
紳士服のネクタイのコーナー、綺麗な紫色に目が止まる。
一目でコレだと思った。きっと、よく似合うだろうって。
うっすらと幾何学模様が入っていて、何だかオシャレな感じ。
自分で買ったことのない数字の値札に、ほんの一瞬だけ躊躇った。
けど、松潤が締めているのを想像すると、やっぱりピッタリで。
お給料よ、さらば。
そう嘆きつつも、足取り軽くレジへと向かったのだった。
「あ、いつ会うか決めなきゃ」
同性だけれども、きっと、そういうコトなのだ。
松潤は知らないだろうけど。だから、大丈夫だよね?
だって、これくらい、ゆるされなきゃ困るよ。