第57章 ホットミルクの底、たまった蜂蜜
side.M
くふくふとあなたが笑うのが聞こえてくる。
間がいいのか悪いのか、目撃されるのは何度目だろう。
「さっすがぁ。モテるひとは違うねぇ」
後ろから肩を組まれ、からかうような響きで言われる。
別にそういう誘いじゃないんだって。
否定の台詞が浮かんだけれど、聞く耳を持たないと分かってるからやめた。
「相葉さんもモテるでしょ。明るいし、優しいし」
何だかんだ真面目だし、オトナだし?
つらつらと出てきそうな言葉を呑み込み、何でもないように笑った。
スタイル良いし、男らしいとこもある。
お兄ちゃん気質だから面倒見も良いし、料理も出来るしさ。
おっちょこちょいではあるけど、素直に謝れるひと。
これでモテなかったら、可笑しいでしょ?
こんなにカッコいいんだから。
でも、女の子と一緒に、楽しんでるとこは見たくないなぁ。
優良物件だと思う癖に、何だか喜べない自分がいた。
二人で立っていると、絵になるって言われるじゃない。
だから、隣にいれば良いのに。
オレは引き立て役になってもイイのに。
「なに、褒めたと思ったら黙っちゃって。どうかした?」
「別に何でもないよ。じゃ、オレ行くから」
肩に乗っかっている腕を外して、サヨナラと手を上げた。
そうすると、こっちが恥ずかしくなる程の勢いで振り返される。
そんなところが可愛いとか。
いつからこんなオレになっちゃったんだろ?
おちちゃったから、どうしようもないけど。
恋に堕ちたままだから、どうにもならないんだけどね。
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「口説かれてないで、さぁ」
「早く自覚して、オレのこと口説けよなぁ。潤ちゃん♪」
天真爛漫に見えるひとが、それだけじゃないって。
フィクションではありがちなことを、このときはまだ知る由も無かった。