第53章 あんぱん、大福、たい焼き
side.A
舌出して、と言われたから。
ちょっとだけ出してみたら、そこだけ舐められた。
ぞわっとして。普段よりも感じちゃうようなカンジ。
間近にある顔を見上げれば、伏せられた目がやけに色っぽい。
ちらっと覗く瞳は、どんなモノを映してるんだろう。
オレを見ていたら嬉しい。もしも、誰かの影を見てるんなら。
あんたの舌、噛んじゃいたくなるよ。がぶりと噛んでやる。
そんなことを考えつつ、翔ちゃんの腰に腕を回した。
それが、合図。
翔ちゃんが吐息だけで笑い、オレの後頭部に掌が触れる。
そのまま互いを引き寄せ、息が出来ないくらいに貪り合う。
「っ、はは…お前、怖い顔してんぞ」
唾液に濡れた唇で、翔ちゃんは笑う。
そういう方こそ、男が剥き出しで怖がられそうだよ?
何だか面白くてどんなのが多いかなって思った。
優しいキスと、優しくないキス。
そりゃ、どっちも気持ち好いし堪んないけど。
基本的に真面目だからかな。するぞって言われる。それも好き。
反面に余裕が全然無くて、いきなり激しくされるのだって。
思い出すだけで、ぞくぞくしちゃう。ホラ、もっと。
「イイじゃん……他じゃ見せないし」
ふふっと笑うと、不思議そうなな表情が返ってきた。
本当に知りたがりなんだから。
でも教えない。オレのこと知りたがっててほしいもん。
知りたいことを知るのも、調べるのも好きでしょ。
だから今は教えない。教えてあげない。
「ほーら、キスしよ。いっぱいね」
あんたが食べたいのは。食べられても良いのは。どれ?
カッコいいのも可愛いのも、オレはみんな好きだから全部が欲しい。
翔ちゃんなら、何でも。何をされても、しても、イイの。
こんなコト考えてるって知らないだろうね。
好きから動けなくなったら教えるよ。
離れられなくなったら、少しずつ教えていくつもり。
「たのしみだねぇ………翔ちゃん」
差し出された手、その指を噛んだ。カリ、と歯を立てて。