第5章 尋ねてもムダなこと
side.M
珍しく二人とも休みだった。
まったりと部屋で過ごしたら、もう夕方。
外に行こうって空気でもないし、何を作ろうかと考える。
「翔さん、食べたいものある?」
一応、聞いてみる。形だけのポーズだけど。
こだわりが強いオレと違って、翔さんは割と頓着しない。
肉か魚か、それぐらいの希望があれば良いかなって感じだ。
「んー」
のんびりとした返事に、これは特に無いパターンだろうな、と見当をつける。
決めてもらった方が楽って意見も分かるけど、オレは結構こういう感じが好きだ。
このひとを構成するものを作ってるって、優越感みたいなのがあると思う。
「適当に作っちゃうよ?」
「お前が作ったの何でも旨いし、任せるわ」
りょーかい、と独り言みたいに呟いた。
変に鈍いとこがあるくせに、偶に凄い殺し文句が飛び出すから心臓に悪い。
とりあえず、いいワイン開けよう。
冷蔵庫を覗きながら、赤くなった顔に気付かないでと願った。何となく悔しい気がするから。