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【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】

第2章 先輩の俺


「お前、FSで俺に何を言おうとした?」
唐突な質問に、礼之は虚を突かれた顔をする。
「GPSでのEXとおんなじだ。今回もお前は、自分の滑りで俺に想いを伝えようとしたよな」
先程から早くなってきた鼓動を抑えながら、ユーリは歩を進めて礼之と更に接近する。
「言えよ」
「…僕の気持ちはもう知ってるでしょ?」
「言えって!俺は日本人じゃねえから、『イシンデンシン』なんか通じねえんだよ!」
理不尽だと思いながらも、ユーリの口から出た片言の日本語に、礼之は僅かに青い瞳を細めた。
(この人は、きっと僕の口から直接聞きたいんだ)
そんな風に考えた礼之は、一度だけ小さく息を吐きながら頷くと、ゆっくりと口を開いた。
「僕はあの諍いから、大会中は努めてユリの事は忘れようとしてた。競技に影響が出たら大変だし、純さんにもきつく言われてたから」
理屈では判るものの、礼之の口から出た「忘れようとした」という言葉が、ユーリの心に刺さった。
「FSの途中までは自分に言い聞かせてた。だけど、演技中盤で僕の大好きなスオミの賛歌が流れた瞬間、僕の中で君への想いが一気に溢れ出したんだ」
事実、礼之のFSの演技は中盤以降から雄大さと美しさを増していった。
礼之の競技にかける想いと丁寧な技の1つ1つに、いつしかリンクを見守る全ての人が、強く引き込まれていったのだ。
「賛歌のメロディを耳にする度頭に浮かぶのは、僕の生まれ故郷スオミの空と森と湖。でも…いつしかそこに、もう1つ加わったんだ。…Koivu(白樺)の若葉と同じ色の瞳を持つ、僕の大好きな人が」
そこで一旦言葉を切ると、礼之は真っ直ぐにユーリの瞳を見据える。
「君が好きだ。足りないなら何度だって言うよ。僕は」
「──もういい…」
告白を遮られた礼之は、「何それ勝手過ぎ」と不満そうに零すも、すっかり赤面しているユーリに気付くと、彼の反応を待つ事にした。
数秒の沈黙の後、それまで礼之の顔を盗み見ていたユーリが、やがて何かを決意したかのように口を開く。
「…お前、未だ顔にゴミついてっぞ。俺が取ってやるから目ぇ閉じろ」
「へ?」
「いいから!」
内心呆れつつ言う通りにした礼之は、間もなく唇に生温かい感触を覚えた。
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