第12章 ヤキモチ…?
〜犬夜side〜
先輩が、ショップに入って1番最初に目についたのは、レッサーパンダのストラップのようだった。
手に取っているので、
「…先輩、それ欲しいんですか…?」
と訊いてみる。
「んー?なんかね、これ犬夜くんに似てる!」
先輩はニッコリ笑いながら、レッサーパンダのストラップを、オレの顔の横に持ってくる。
「ふふ、かわいい」
卑怯だ…。
先輩はレッサーパンダのストラップにかわいいって言ったはずなのに、オレに言ったかのようで。
やっぱりオレはまだまだ単純で。
少し嬉しくなる。
「あー!これお揃いにできる!」
そう言って、先輩が手に取ったのはゾウのストラップ。
なんとも、鼻がくっつくらしい。
「これ買おうよ〜」
「はい!買いましょうー!」
「んじゃあ割り勘すると…」
「大丈夫です。これぐらいならオレ払えます!」
そう言って、オレは先輩からストラップを受け取り、レジへ行く。
「ありがとう〜」
先輩に片方のストラップを渡す。
「いえ、オレもお揃い嬉しいです!」
「ふふ、良かった〜。今日、なんとなくだけど、犬夜くんテンション低かったから」
先輩が心配してくれていたとは、つゆ知らず、オレは動物にヤキモチをやくだなんて…。
「先輩っ!」
そう言ってオレは先輩に抱きつく。
「ちょ、犬夜くんっ…」
「へへ、先輩〜好きですよ〜」
「何言ってんの…っ」
そう言いながらも先輩は顔が赤くなっている。
ヤキモチをやいていたことが嘘みたいに、オレは動物園に来てよかったなーなんて思っている。
「先輩…キスしたいです」
「…す、すれば?」
なんとなく強気な先輩だ。
かわいいなと思いながら、口付けを交わす。
「先輩、可愛いですよ」
耳元で囁くように言う。
すると今度は、先輩は耳まで真っ赤にした。