【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
躊躇いも作為も感じないまっすぐな言葉。真摯な眼差し。こちらを安心させようという心遣いのこもった声。オール・フォー・ワンを継ごうと決めたのは出久自身だが、その秘密を一切他人に漏らしてはならないという厳重な制約は、彼にとって少なからず重荷になっていたところではあった。
あの言葉で、表情で、知らず知らずのうちに張っていた肩肘がどれだけ軽くなったか。あれが出久を懐柔し騙すためのものだとは、どう頑張っても疑いきることができない。
けれどこれは感情論でしかないだろう。たとえどれほどはっきりと輪郭を持った確信でも、何か絶対的な証拠がなければこの感覚は独りよがりなものでしかない。
証明しなければ。彼を信じ続けたいなら、自分から証明のため動くべきだ。大人たちの対応を手をこまねいて待っているのではなく。でなければ永遠に彼の真意を知ることなどできない、そんな気が出久にはしていた。
「みんな今日はもう用事ないんでしょー? なら一緒に帰ろ! 駅近にめっちゃ美味しいパン屋さんできたんだって! みんなで買って食べようよ!」
教室でひときわ溌剌とした声が上がり、出久の思考は一時中断された。声の主は1ーAクラスメイトの芦戸三奈だった。ピンク色の肌に真っ黒な瞳というエキセントリックな配色の外見に違わず、賑やかで常にクラスの中心にいる生徒だ。
「おぉ~いいね!」
「賛成~!」
彼女の提案に、何人かのノリの良いクラスメイト達が間髪入れず賛同した。が、そこに険しい表情をした飯田が割り込んでくる。
「みんな! 寄り道は良くないぞ! 学校が終わったら速やかに帰宅しよう!」
直角に曲げた腕をぶんぶんとロボットのように振り回しながら抗議する飯田に、芦戸がげんなりした様子で言う。
「ま~た飯田はそうやって水差す~」
「つかさぁ、雄英の校則には放課後寄り道禁止なんて書いてねぇし、ほら、交流深めるのも大事じゃね? 俺ら何だかんだまだ会ったばっかなんだし」
そう反論したのは同じく1ーAの生徒である上鳴電気だ。彼は出来合いの反論をしただけのつもりだったのだろうが、飯田ははっとしたように手を顎に当て、真剣に何事かを考え出した。