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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第3章 対人戦闘訓練




 そう言い終わるやいなや、転校生の体に変化が起こり始めた。めきめきと音を立てながら両手の指が膨らんでいき、指に生えた黒い爪が鋭く尖りながら伸びていく。同時に背中からは折り畳まれた黒い節のようなものが二つ、ずるりと何か体液のようなものに濡れて糸を引きながら姿を現した。それは外気に触れるやいなや急速に乾いてふくらみ、鴉の羽のようなさらりとした質感を得ていく。


 そこにいた誰もがその光景に釘付けになった。まるで、さなぎが殻を破り蝶に生まれ変わっていく瞬間を目撃しているかのように。


「あれが、一ノ瀬くんの個性……」


 出久は思わずそう呟いた。出し入れ自在の爪と、翼。相澤の説明を聞いただけではぴんと来なかったが、実際に目にするとどこか壮絶なものがある。身長ほどはあろうかというほど大きな黒い翼と、7、80cmほどに伸びた黒い爪。相当硬い材質でできているのか、合計10本あるその爪は太陽の光をうけてぎらりと輝き、その高い殺傷能力を雄弁に物語っている。


 こんな喩えをするのは我ながら恥ずかしい。だが誰もが思ったことだろう。その姿はさながら地上に舞い降りた悪魔だった。黒い翼を背負い、黒い爪を携え、ただ二つの瞳だけが爛々と、こぼれた血液のようにどす赤い光を放っている。様々な個性が世にはびこる現代にあって、転校生のような個性は特別珍しいというわけでもない。それなのにその姿は妙に異質で、この世界とひどく相容れていないように見える。


 そんな、転校生が放つ独特の雰囲気に出久が生唾を飲み下すのを待たず、翼が乾き準備が整った転校生が足で素早く地を蹴った。両腕を引き、体勢を低くして加速する。その電光石火の動きに勝己はやや狼狽えつつも、右腕を突き出して迎撃の姿勢をとった。


 しかし。


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