第7章 Sixth
ぴくり、と肩を揺らしながらこちらを振り返ったのは、紛れもなく彼……吹雪士郎で、朱音は一瞬動きが止まる。やっと会えた、その嬉しさを言葉にしたいのに、何も出てこない。代わりに、気がつくと吹雪の元へ駆け出していた。
雪に足を取られながらも、吹雪の元まで足を進め、そして、彼との距離があと歩幅一つ分ほどとなった時、急激に彼との距離が縮まった。
ぐい、と少し強い力で腕を引かれ、瞬間的に彼との距離が0になる。
「朱音ちゃん」
耳元でふわりと囁かれた声。ここで初めて状況を理解した。
朱音は今、吹雪の腕の中にいる。抱きしめられていた。
「吹雪くん……」
その状況に動揺するよりも、ずっと会いたかった彼の声に、温もりに安心した。彼の背にきゅ、と腕を回し、彼がそうしたように、名前を呼んだ。
ふたりの間に言葉はなく、ただ、会えなかった時間を補うように、静かに抱きしめ合った。
ふたりのクリスマスは、始まったばかりである。
end