第25章 Winter memory⑥
・・・・・・・・・え?
私の思考は完全に停止した。
「このチームの更なるレベルアップの為にもイタリアで精進して参りますので、皆さんご理解頂けると幸いです」
まだ及川さんが話しているのに、全然頭に入ってこない。
私は呆然と及川さんを見つめることしかできなかった。
「尚、及川選手がイタリアへ移籍する日にちは、急になりますが1週間後に決定しています。その間、挨拶回りなどで会社に顔を出すことも難しくなりますので、ご了承下さい」
ざわめく空気の中、司会を務めていた国見くんが補足する。
「皆さん、驚かせてしまって申し訳ありません」
再び及川さんが口を開く。ざわめく会場が再びしんと静まる。
「だけど俺は、このチームが大好きです。このチームの為に、異国の地で頑張ってきますので、どうか応援宜しくお願い致します!」
そう深く頭を下げる及川さんに、一人の拍手が贈られる。
拍手は次第に数を増して大きくなり、
その激励の拍手の中、私だけがぽつんと取り残されたまま立ち尽くしていた。
今・・・目の前にいる及川さんが、1週間後には・・・
遠くへ行ってしまう・・・
嘘のような、現実に、私はついていけてなかったーーー・・・