第142章 白い箱
無言で私を見詰めた後にゆっくりと視線を外した彼はふぅっと息を吐くと
「誕生日おめでとう」
はっきりとした声で言った
「!!……っありがとうございます!」
正直めちゃくちゃ忘れていたが彼の言葉に本日が自身の誕生日なのだと思い出す
交わった視線の先大好きな大きな瞳とは対照的に自然と細まる目
誕生日の事を話したのはたった一度だったにも関わらず覚えていてくれた事、そして大好きな彼に"おめでとう"と言って貰えた事が本当に嬉しかった
不意にキッチンへ消えた彼の行動に箱の中身を確信した私はニヤニヤが止まらずにソワソワと身体を揺らしてしまう
照明が消えた室内に柔らかな蝋燭の光が揺れて運ばれて来たケーキは小さくて二人でも無理無く食べられそうな平凡なケーキだった
「おめでとう沙夜子、同じ歳に成ったね」
優しい声色で言った彼は柔らかな微笑みを浮かべていて
私は何だか泣きそうになりながら蝋燭の炎を吹き消した
「イルミさん……ほんまにありがとうございます!!」
感激や切ない気持ちで心が一杯で視界が潤む中
「うん。はい、これプレゼント」
「………え、……」
彼は紙袋を差し出した